多くの企業が当たり前のように行っている入社式。入社式を行う目的は、企業によって異なるかもしれませんが、多くの場合は社長のスピーチや先輩からの祝辞、辞令交付等を通じて、「新入社員に社会人としての“自覚”を促すこと」を目的に実施します。
今回は、SNS等で話題となった面白い入社式事例をご紹介します。
もくじ
入社式は何を目的に実施するのか?
入社式は毎年の恒例行事であるため、そもそもの目的や意義が形骸化している企業が散見されます。入社式を行う目的は、企業によって異なるかもしれませんが、多くの場合は社長のスピーチや先輩からの祝辞、辞令交付等を通じて、「新入社員に社会人としての“自覚”を促すこと」を目的に実施します。
また、新卒社員にとって「社会人として」初めての行事である入社式は、新卒社員の記憶にも残りやすいため、入社後のモチベーションを大きく左右する重要なイベントと言えるでしょう。
近年、早期離職率が高いことに悩みを持つ企業も多いですが、新社会人にとっての初行事である入社式を工夫することで、新入社員に「ここに入社してよかった」「これから頑張ろう」と思わせ、高いモチベーションで仕事に取り組んでもらうことができれば、結果的に早期離職率の改善につながるかもしれません。また、他社が実施していないようなユニークな入社式を実施することで、世間から注目を集め、企業PRに繋げることも可能です。(入社式の様子を採用サイトやナビサイト、SNS等で配信し、自社の認知度を向上させるなど)
今回は、SNS等で話題となった面白い入社式事例をご紹介します。
【事例①】靴用品メーカーによる「靴磨き入社式」
~自社商品を活用した「靴磨き」を通じて、部署内のコミュニケーションを活性化~
創業117年の老舗靴用品メーカー様の入社式は、先輩が新入社員に靴磨きを教え、新入社員が先輩の靴を磨く「靴磨き入社式」を実施しています。
靴磨き入社式は、以下を主な目的として実施しており、1971年から現在に至るまで毎年恒例で行っています。
- 自社製品に初めての仕事で触れてもらい、会社への愛着を生み出すこと
- 商品を使って新入社員と先輩社員とのコミュニケーションを活性化させること
「靴磨き」という同社にとって重要な作業で、先輩が新入社員に対して道具の使い方や、布の持ち方などを丁寧に指導し、実際に新入社員が靴磨きを実践することで、配属後も部署内の連携がスムーズになったそうです。
また先輩社員も、自身が新入社員だった頃を思い出し、初心に帰るタイミングとして有益な時間となっています。
【事例②】食品・調味料販売会社による「親子同伴入社式」
~入社式の主役である新入社員が、両親に対して感謝や想いを伝える感動の入社式~
近年、親の意向により内定辞退を希望する学生が増加していることから、「親対策」が採用活動上の重要な施策の1つとなっています。
上記の状況を踏まえて、食品・調味料販売を営む同社は、新入社員の両親に自社への安心感を持ってもらうことを目的に、2005年から親子同伴での入社式を行っています。
同社の入社式では単に両親を呼ぶだけでなく、新入社員が両親へ今までの感謝や想いを伝える「声の手紙」を発表することで、新入社員とその両親にとって記憶に残る入社式を行っています。
同社以外にも、入社式に出席した保護者に自社商品を手渡す企業や、サプライズメッセージとして入社式時に両親から預かった手紙を読む企業など、新入社員の親を巻き込んだ入社式を行う企業は、近年増加傾向にあります。
【事例③】総合リゾート運営会社による「契りの会」
~会社と社員の垣根を超えたサービス業界ならではの入社式~
総合リゾート事業を営む同社は、「顧客は友人、社員は家族」という同社が大切にしている価値観を浸透させることを目的に、大きな横断幕に手形で契りを残す、「契りの会」という入社式を毎年恒例で実施しています。
新入社員は、働く上での決意と目標を1人ずつ川柳で発表した後、手のひらに絵具をつけ、横断幕に自身の手形を押していきます。
この手形の契は、以下のような「会社と社員で結ぶ2つの約束」を意味しています。
- 会社が社員に対し、法律上の雇用関係だけではなく、時には雇用主と雇用者との関係を超えて社員を助けるという約束
- 社員が研修を通じて理解した、組織の文化に寄与するという約束
同社の入社式は5日間の入社前研修の最終日に行われ、その研修では接客研修や経営に関するデータ分析などの座学プログラムだけでなく、自分たちで食事の準備や客室の清掃を行うなど、ホテル運営の基本と同社の組織文化を学ぶことができます。
そして入社式時に、新入社員は「入社式前に学んだ研修を、1人1人がその後の仕事に活かすこと」、企業は「新入社員を仲間として受け入れ、会社がサポートして乗り越えていくこと」を、それぞれの約束事として交わすことで、社員の入社後のモチベーションを高めています。
業界の多様化等に伴い、サービスレベルの向上並びに他社との差別化が重要となるサービス業ならではの狙いを持った入社式は、業界問わず注目を浴びています。
入社式を成功させるためのポイント
~会社全体で歓迎ムードを醸成しつつ、「何を伝えたいのか(≒実施目的)」を明確に!~
「面白い入社式事例」を3つご紹介しましたが、各社の共通点として以下が挙げられます。
〔ポイント〕
- 会社全体で新入社員の歓迎ムードを醸成しており、入社前の不安を解消する
- 企業風土や価値観、事業の強みなどを体感できるコンテンツを盛り込むことで、新入社員のモチベーションや自社へのロイヤリティを高める
⇒「何を伝えたいのか」が明確になっている - 「対新入社員」だけでなく、「親対策」や「企業PR」にも有効活用し、採用ブランディングの強化を図っている
入社式は新入社員にとって新社会人のスタート地点です。通過儀礼で行うのではなく、「何のために実施するのか」「入社式では何を、どのように伝えるのか」について再度検討し、新入社員が「この会社で良かった!」と思えるような入社式にリニューアルされてはいかがでしょうか。